治療院経営においてプリペイドカードの導入はメリットがあるか?
“プリペイドカードの導入を検討しているのですが、どうなんでしょうか?”
最近、当会員の先生からこのようなご相談を受けました。
既に回数券から切り替えている接骨院や治療院もあるようですね。
ただ、少し慎重に考えてみていただきたいと思います。
プリペイドカードのメリット(と、されている項目)は、
1.プリペイドカードは単一メニューではなく複数メニューに使用できる
2.使い切りにならない(端数が残る)ので、追加購入を勧めやすい
3.割引が回数ではなく、金額で明示されるので売りやすい
なのですが、このように箇条書きで列挙すると治療院の原理原則から大きく外れていることが分かります。
治療院は患者に対して「治療計画を提示し、同意をいただく」のが基本です。
治療計画には当然、治療期間、回数、頻度、治療内容が含まれています。
そのように考えてみると
「1.複数の治療メニューに使用できる」は、おかしいのではないでしょうか?
治療家が指定した治療期間に突然治療内容(しかも価格の違う治療)がかわるのでしょうか?それとも、患者に言われて変えるのでしょうか?患者側が「今日は全身コースで。」「今日は肩だけで。」と言われて従うのは治療院ではありません。
「2.使い切りにならない、追加購入を勧めやすい」はいかがでしょうか?
リラクゼーションサロンのようにリピーターとして永遠に通わせ続けるつもりならありかもしれませんね。でも、治療院はリラクゼーションサロンとは違います。治療院の本質的な目的とは何か?をぜひ考えてみてください。
あなたが歯科医院にかかることを想像してみてください。3か月間週1回通うという治療計画で、プリペイドカードを提案されたら、違和感を覚えませんか?
“治療が終わった後にプリペイドに残金が出たらどうするんだろう?”
って思いますよね?そして、「端数はホワイトニング(別メニュー)に使えます。」と言われても、「私治療に来ているのでホワイトニングとか興味ないです。」って心の中で思うのではないでしょうか?
ここで、プリペイドと比較される回数券を考えてみましょう。ワンクール週2回計8回通ってもらう治療計画であれば、回数券のつづりは8回分です。8回の治療計画なのに10回券や12回券の回数券だと意味がありません。患者の頭の中に「余った分はどうなんだろう…?」という疑問がわくからです。ですから治療計画に合わない回数券を用意していると、これも治療院の原理原則とは合わないのですね。
「この先生、プリペイドカード(回数券)売りたいのかな?」なんて思われたら(患者は口には出しませんが、そういった感覚に敏感ですよ!)、悲しくありませんか?患者を治す治療家なのか、プリペイドカードを売るセールスマンなのか、どちらか分からなくなりますよね。
「3.回数より金額の割引の方が売りやすい」もどうですか?
回数券であっても「通常8回だと20,000円のところ回数券だと18,000円で受けられます。」と割引をしますので、同じではないでしょうか?
もちろん、プリペイドカードの導入自体に異議を唱えるわけでは無いですし、他の業態では良い手法になりえます。しかし、治療院という業態には使えません。
ちなみに、私が考えるプリペイドカードのメリットは、
1.回数券(紙)よりカードが美しい、丈夫で保管しやすい
2.繰り返し利用することができる
3.長期間のデータ管理が可能となる
これらは導入費用や管理費用がリーズナブルであれば、メリットになると思います。
しっかりと院の治療計画に沿って使うことができ、かつコストとメリットが見合えば、プリペイドカード導入も悪くないでしょう。
これまでも「松竹梅理論」 「返金保証」 「ビフォアアフター」など他業界で有効でも治療院業界で行うと逆に不利益になってしまうマーケティング手法を解説してきましたが、しっかりと治療院の原理原則を学ぶと、このような手法の取捨選択ができるようになるので、その分無駄な勉強に時間を使うことがなくなります。
確かに真新しいノウハウは魅力的ですし、そのノウハウでの成功者が1人でもいたら「私も導入してみたい…」と思う気持ちはよく理解できます。
だからこそ、治療の本質や治療院の原理原則を意識した上で慎重に、じっくり導入するメリットデメリットを考えてみていただきたいと思います。