治療家が必ず知るべき「痛みの解消」と「治療」の違い
これまでに3000院を超える治療院の経営を目にしてきましたが、その中で気づいたことの一つが、治療家の方が、「痛みの解消」と「治療」を同じ意味として使っているということです。もちろん「治療」に取り組まれている先生は沢山いらっしゃいますが、一部には「痛みの解消」にとにかくフォーカスをしている先生も見受けられます。
中には、「痛みの解消を最大の目的にしている」という治療家の先生もいらっしゃるぐらいです。確かに、院に来られる患者様の多くは、一時的な痛みを解消したくて来院される方がそのほとんどかもしれません。では果たして、治療家の仕事はその痛みを解消するだけなのでしょうか?
「痛み」がなければ人は生きていけない
そもそも「痛み」は何のために存在するのかを考えてみましょう。ヒザの痛みに悩む高齢者の方。四十肩に悩むサラリーマン。腰の痛みに悩む主婦…。あなたの院にもこのような患者様は来るかと思います。「痛み」は、患者様にとって苦痛以外の何物でもありません。では、果たして「痛み」は、悪いものなのでしょうか?私はそうは思いません。むしろ「痛み」は身体に問題が起きていることを知らせてくれる大事な存在だと考えています。
例えば、人間の身体機能から痛覚が消えてしまった世界を想像してみてください。
・もしも、骨折しているのに「痛み」が無かったら…
・もしも、内臓に重大な疾患あるのに「痛み」が無かったら…
・もしも筋肉が断裂しているのに「痛み」が無かったら…
当然、患者さんは適切な治療を受けなくなり生命の維持に関わる大問題になってしまいます。
車のエンジントラブルに学ぶ「治療」の考え方
「痛み」は、人間の身体のどこかにトラブルが発生した時にあらわれる、無くてはならない危険信号のようなものです。例えば車を運転中に、スピードメーターのすぐ側のエンジン警告灯が急に点灯したとします。きっと運転手は、これを見て車に何かしらの問題が起きたことに気がつくはずです。このエンジン警告灯の点灯こそが、患者様にとって「痛み」の発生です。
では、このエンジン警告灯を消すためには、どんな方法を取るのがベストでしょうか?警告灯の電球を取り外したり、電球に繋がるコードを切ったりすれば、当然ランプは消えます。ですが、じゃぁそれが本当にエンジンの不調を解決することになるかと言えば、そんなはずはないことは小学生でもわかると思います。そのまま走り続けると、きっとエンジンが焼き付いて最悪の場合廃車になってしまいます。
その場で「痛みがなくなった」ことを喜んではいけない
患者様に当てはめると、痛み止めの使用や痛みを解消するだけの施術が、これと同じ意味になります。自動車を根本から修理するためには、エンジンのどこに問題があるのかを明確にして、適切な修理をする必要があります。治療院においてもそれは同様で、患者様の痛みの原因となっている筋肉・骨格・運動神経・自律神経に発生している根本的な原因を解消することが大事です。
これらの根本的原因を解消しないまま「痛みの解消」だけを行うことは。一時的には患者様からは感謝されても、治療院経営の本質から外れていることになります。患者様の一時的な苦痛はもちろんのこと、その根本的な原因にまで目を向けることができる治療院こそが、10年、15年と経営を続けることができる治療院になることができるのです。